映画館に行くというセルフケアについて考える
インターネットで知り合った人と会って話すと、なんらかの "推し" のお話を伺う機会が多々あります。私は何・誰を推しているのか、と考えた時、特定の "推し" というものは思いつかないですが、映画を観ることが好きです。
アニメより映画な家庭で育ったことや、学生時代に専門だったことも少なからず影響はしますが、フィクションにしろノンフィクションにしろ、数時間で自分と違う価値観や感性、自分が選ばなかった人生を窺い知ることができるところが面白いと感じています。同じような理由で書籍ももちろん好きですが、映画は繰り返し使われる題材が人によってこんなにも解釈が変わるのか、ということが、カメラの動きや構図、演者の動き、衣装や映画内建築の様相、といろんな角度から映像を通じて理解させられるところが特異だなと思います。*1
とりわけ自分の中で、映画館で映画を観る、という体験のことは重視しているような気がします。多くの人がそうだと思いますが、映画館に行くと、ひとたび着席すると映画を観る以外にすることがなくなるんですよね。自宅だと再現することがなかなか難しいレベルで暗くなり、視界はほとんど映像で満たされて余計なものが入り込んできづらい。*2自宅だと再生している映画以外のものが視界に飛び込んでくる割合が大きくて、思考がそっちに持っていかれたり、そのまま考え事に耽って映画についていけなくなってしまうこともしばしば。視界に映像しか入ってこないと、映像のことしか考えられなくなり、余計なことを思い悩んだりできなくなるんですよね。映画館に行って仕事や生活の悩み事をする方が難しくなります。
私にとって映画館で映画を観ることは、自分の趣味・嗜好である以上に、目下の考え事や悩み事から離れて心を落ち着かせるセルフケア的な要素が大きな割合を占めているようです。
セルフケアとしての映画体験を最大化する3つのマイルール
さて、セルフケアとして映画館に行く、という体験を最大化するために、いくつか実践しているものがあるなと気がつきました。
Loopを持ち込む
以前、自分のポーチの必需品の一つとしても紹介したLoopという耳栓。映画を観るのに耳栓?と思われるかもしれませんが、案外いいんです。
Loop Quiet 2は耳栓ではあるけれど、音を完全に塞いでしまうわけではなく、テレビの音量を四つ、五つくらい下げるみたいなイメージ。
元々いろんな場面で使ってはいますが、映画館にも持ち込んで、必要に応じて装着しています。ケースがコンパクトなので、どんな鞄にも本当に入れていきやすい。
多くの方が経験あるであろうと思うのですが、隣の席のちょっとした物音、食べ物を咀嚼する音が気になる時ってありますよね。そういう時や、効果音が大きすぎると感じるちょっと感覚過敏になっている日に装着することで、自分によりちょうどいい状態で映画を観ることができます。特に映画の音が大きすぎると感じることは私にとって割とよくあるので、Loopが鞄に入っていると安心して映画館に行けます。
座席に課金する
私はTOHOシネマズを一番よく利用しているのですが、その理由がプレミアムシートの存在かもなと思います。通常の映画料金にプラスしていくらか支払うことで、隣の席との間隔が通常より開いた席で映画を観ることができるものです。
私は基本的に映画館には一人で行くのですが、感覚過敏になっていると隣席の存在が気になる時が度々あります。公共交通機関もそうですが、隣に座る人のことは選べないですからね……。特にヒット作の上映や、いつもと異なる時間帯など、よく知っている客層と異なる客入りになりそうだなと感じる映画はオプション料金を支払って隣席との間隔を取ることで、匂いや音がずいぶん気になりづらくなります。
プレミアムシートでなくても、4DXも隣席との間隔が多少開くので、そのような理由で4DXの上映回に入ることもあります。
そこまでしてでも映画館に行くのか?と思わないこともないのですが、自分が心地よく過ごす時間を確保するためにはそんなに高いオプションでもないと思います。
終わった後になるべく遠回りをして帰る
映画を観終わり劇場を出た後、都心部であれば地下鉄の駅1〜2駅分ぐらい、ちょっと遠回りに歩いて帰ります。映画を観終わってすぐ鑑賞前の状態に戻すのではなく、2駅分ぐらい時間をかけてちょっとずつ戻していく、という感覚です。歩くことが難しければどこかに座ってお茶を飲むとかでもいいと思います。映画を観て感じたことにフォーカスしてもいいし、何も考えなくてもいいんですが、SNSやインターネットはなるべく観ないようにしているかな。せっかく考え事から距離を置いていたので、できるだけ長くその状態を味わいたいものです。
何もしない時間を過ごすために映画館に行くということ
ただゆったりと座って、体をリラックスさせながらその場で過ごす、そのついでに娯楽を享受するということができるのは、映画館かプラネタリウムぐらいしか思いつきません。セルフケア的な文脈で言えば、そこもまでしてでも考え事から離れる時間を持つということには十分お金を支払う価値があります。私は映画そのものが好きなので通っているのもありますが、目下の問題から距離をとり、何もしない時間を過ごすために映画館に行く、というのも映画館という場所のおすすめの使い方だなと思います。